生活習慣病やダイエットに効果のある有酸素運動ですが、最新の研究では、認知症で最も多いアルツハイマー型認知症の発症の危険性を低下させる効果があることも報告されています。
有酸素運動は認知症の予防にも期待できる
有酸素運動は、高血圧や糖尿病、肥満などの生活習慣病予防対策の一つとし効果が指摘され、ダイエットにも効果がありますが、認知症の予防にも効果があるとの報告がされています。
認知症は、「アルツハイマー型認知症」と「脳血管性認知症」の2つに分けられます。
脳血管性認知症は脳梗塞や脳卒中、脳出血など、脳や脳の血管にまつわる病気が原因になりますが、これらの脳血管障害は生活習慣病と関係があり、ウオーキングなど運動習慣を持っている人は脳血管性認知症の発症が少なくなっています。
一方、認知症で最も多いアルツハイマー型認知症は、脳細胞の性状や性質が変わってしまうために起こるといわれていますが、本当の原因についてはいまだによく分かっておらず、そのメカニズムについての研究が行われていますが、最新の研究では、アミロイドβが発症の原因ではないかと言う「アミロイド仮説」が有力となっています。
アミロイド仮説とは、脳の神経細胞で作られるタンパク質がアミロイドβになり、このアミロイドβ蛋白質は互いにくっつきやすいので、脳内に蓄積することで脳の中に老人斑がつくられ、この老人斑が神経細胞を死滅させて、その結果としてアルツハイマー病が発病すると考える説です。
東京都健康長寿医療センター研究所の矢冨直美氏の報告によると、
「カナダの研究で9,000人を5年間追跡調査し、その半数以上を分析したところ、通常の歩行よりも強度のウオーキングなどの運動習慣が週3日以上ある人は、運動しない人に比べてアルツハイマー病発症の危険性は半分になっていました」
また、ハワイの日系人を対象に1日の歩行距離とアルツハイマー病発症率を見た研究でも、1日に約3キロ以上歩いている人に比べ、約400メートル以下しか歩かない人は発症の危険度が2.2倍だった。
有酸素運動によってアルツハイマー病の危険度は半減しています。
動物実験でも、アルツハイマー病を引き起こすと考えられているアミロイドβ(ベータ)という物質を遺伝子操作でできやすくしたラットを用いた実験では、運動させたグループはアミロイドβの蓄積量が、あまり運動させないグループに比べて40%も少ないという結果が出ています。
運動させたラットでは、アミロイドβを分解するネプリライシンという酵素が多く作られることも分かっています。
このように、脳を活性化する効果のある有酸素運動は、アルツハイマー型認知症の発症の危険度を低下させます。
危険度を低下させる有酸素運動を実践するには、1日30分、週5回は歩幅をいつもより10~20%広げて早足で歩き、それを含め毎日8,000歩を目安に歩くようにすると良いと東京都健康長寿医療センター研究所の矢冨氏は勧めています。